今回の話は、数年前の出来事になります。

  私は、自宅の1階の和室で作業をしていました。

  すると急に、開けっ放しにしていた押入れから、ポトリと何かが落ちる音がしました。振り返ると、一匹のカナブンが押入れの中板の手前側にいました。「いつの間に入り込んだんだろう……」と思いながら、押入れの襖をそっと閉めました。私は虫が苦手なので、見ないようにするためです。

  そのまま作業を続けました。すると突然、大きな羽音がしました。先程のカナブンです。「押し入れに閉じ込めたはずなのに……」と思いながら、和室の隣にあるリビングへ移動することにしました。カナブンが照明の周りでうるさく飛び回っている中、集中して作業を続けるなど私にはできません。

  しかし、しばらくしてまた羽音が聞こえてきたのです。うんざりして、2階に移動しようか迷いましたが、またカナブンが着いてきたら嫌なので止めました。

  リビングにまで入ってきたカナブンはまた照明の周りを飛び回り始めました。しかし、一度冷静になって考えてみましたが、「天井の近くを飛び回っているだけでこちらに危害を与えてこないのであれば、そんなに気にする必要はないのではないか」という結論に至りました。そこで私は、カナブンを無視して作業を続けようとしました。ところが、照明の周りを飛んでいたカナブンが、突然私の腰に突撃してきたのです。一度は見逃そうとしましたが、絶対に家の中から排除することに決めました。

コースターの上に留まっているところを、何枚も重ねたティッシュの上から掴み、あらかじめ開けておいた窓の外へ放り投げました。塀にぶつかったせいで弱ってしまったようだったのでその点は申し訳なかったですが、家から追い出すことができて安心しました。